この記事ではテレワークのやり方について詳しく解説しています。新型コロナウィルス感染症によって注目を集めたテレワークですが、実際に企業で採用するにはセキュリティ面を含め様々なハードルがあります。本記事ではそれらの障壁とその乗り越える際のポイントを解説しています。是非ご覧ください。
テレワークのやり方
事務や経理がテレワークを実現するには?
ペーパーレス化の促進です。事務職や経理職の方々がテレワークを実現できない最大の理由は、紙書類での業務処理が多いことです。取引先との請求書や営業の出張費の申請処理など現在も紙ベースで処理を行っている企業が、多くなっています。
オフィスのペーパーレス化は、なぜ進まないのでしょうか。事務や経理の方からすると、「上司に書類の押印を貰うためだけ」に、出社したくはありませんよね。
理由としては4つ考えられます。
- ICT環境の整備
- 取引先との調整
- システム障害への対策(BCP対策)
- 全社的な意識改革
1つめはICT環境の整備になります。ICTは、(Information and Communication Technology)の略語です。ここでは、社外でPCやスマートフォンなどを使うためのネットワーク環境の整備、クラウドシステムの導入、セキュリティ対策などを指します。
ICT環境を整備するには、数十万~数百万円の費用がかかってきます。「出社すれば問題なく仕事ができる」や「そこまで投資する必要があるのか」と、考える経営者がいても不思議ではありません。しかし、ペーパーレス化を促進することで、日々の紙の印刷代や購入費などランニングコストを抑えることができます。また、クラウドシステムを導入すれば、クラウド上でデータの管理ができるため、書類を探す手間や管理が楽になり、業務の生産性向上にも期待ができます。
2つめは取引先との調整です。取引先への提出書類が紙ベースでの提出が多い場合、自社の都合だけで簡単に変えることはできません。段階的に電子ファイルでの提出への変更や変更時期が確定したら文書やメールで周知を行うなど、取引先と密接なコミュニケーションを取り、スムーズに移行を行うことが大切です。
3つめはシステム障害や災害などアクシデントがあった際の対策(BCP対策)です。紙での保存であれば災害や盗難が無い限り、データ流出の心配はありませんでした。しかし、クラウド上で保存した場合、システムダウンや外部からのハッキングなどでデータを失う恐れがあります。よって、セキュリティ対策を万全にすることが求められます。
そして、最後は全社的なの意識改革です。特に経営層や管理職などに就いている方々の意識が、「書類=紙」である限り導入は難しいでしょう。一般社員がテレワークをいくら希望しても、テレワークの導入を決めるのは、会社への影響力が大きい方々の意思が優先されるからです。まずは経営層がテレワークのメリットや導入意義を理解することが、テレワーク導入への第一歩となるでしょう。
営業がテレワークを実現するには?
離れた場所にいても顧客と商談を行うための環境整備が必要です。営業は売上を継続的に上げることが仕事であり、顧客から1件でも多く発注をもらうことが求められます。売上を上げるためには、顧客との信頼関係を築くことが不可欠であり、自身や商品の魅力を顧客に伝える商談は欠かせません。
どこにいても顧客と商談ができる環境を整えることで、移動時間の削減や顧客との商談回数の増加につながり、売上UPにも期待ができます。テレワークに必要なツールを4つ挙げました。
- タブレットやノートPCの支給
- Zoomなどオンライン会議システムの導入
- 社内資料を外部からでも閲覧可能にするシステム整備
- チャットワークなどビジネスチャットの導入
一つ一つみていきましょう。1つめは、手軽に持ち運びできる機器の支給です。顧客先や外回り中のカフェなど、様々な場所で仕事を行なえる環境を整備することが求められます。
2つめは、顧客や取引先との商談用ツールです。メールや電話だけでは、「自分の意図していることが100%伝えられていない」と、感じることはありませんか。これまで対面での営業が重要視されていたのは、お互いに相手の顔が見える安心感も大きかったでしょう。
顧客側も数十万~数千万のお金が動く重要な企画や大きい商品の購入は、簡単には決められません。顧客側が抱えている課題をクリアし、安心感が持てたときに初めて契約や受注が決まります。対面での商談と同様にオンライン会議を重ね、顧客の不安を取り除くことが大切です。
3つめは、顧客との商談の場において必要です。商談時に顧客から、見積書や商品の仕様書などを求められる場合があります。求められた書類をすぐに見せることができれば、スムーズな商談の進捗や契約受注が期待できるでしょう。
最後は、社内外での円滑なコミュニケーションを取ることが狙いです。絵文字や画像などを使うことで、メールよりも柔らかい雰囲気で情報共有ができます。また音声通話やビデオ通話機能が付いているサービスを選べば、共有事項があったときに、チームのメンバーと打ち合わせをすることが可能です。
テレワークで必要なサービス
オンライン会議システムのzoom
ネットワーク回線が途切れにくいと評判なオンライン会議サービスです。 テレワークの導入にはもちろん、取引先との商談、採用面接にも使われています。 オンライン会議を導入するメリットは、下記になります。
- どこにいても会議や打ち合わせが可能
- 移動時間や費用を削減
- 多様な働き方が可能
オンライン会議システムを利用する最大のメリットは、場所を問わずに打ち合わせや会議を実施することができます。 これまで移動に掛かっていたコストや時間を削減することができるからです。 また、場所や時間の制約を受けないので、自宅やサテライトオフィスといった場所での勤務も可能となります。 子育てや介護など家庭の事情で退職しようと考えていた社員にも、新しい働き方の選択肢を提供できるでしょう。
オンライン会議システムの背景を変更し、安心してテレワークを実現するには?
昨今はマーケティングの一貫として様々な企業が会議システム用の壁紙を提供しています「自分の部屋の様子を見られたくはない」と、感じている方も多いのではないでしょうか。 特に有名なものを下記にまとめてみたので、是非参考にしてください。
配信元 | 特徴 | 利用方法 | 例 |
壁紙屋本舗 |
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映画・テレビ番組・アニメなど |
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企業配信 |
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リモートアクセスするためのVPN
スマートフォンやノートPCといったデバイスを社内外のカフェや自宅でも、オフィスと同様の状態で使えるネットワーク環境を整えることです。回線の接続の窓口となるVPNゲートウェイを社内に設置し、社外で利用するデバイスには、専用ソフトをインストールしておきます。すると社外から社内のネットワークにアクセスしたい時に、該当のVPNソフトを通じてVPNでの接続が可能となり、社外でも社内のシステムが利用できるようになります。
VPNに必要なセキュリティ
VPNは通常「アクセスする人の簡単な認証」「機器の認証」「通信の暗号化」を行っています。しかし、端末事態のデータを保全する事や、なりすましによる不正ログイン等に関しては依然としてあまり優れていません。また近年ではVPN事態に脆弱性が含まれており、大規模なセキュリティインシデントを引き起こしてしまったこともありました。
全社の端末情報の保全という意味では、DaaSと呼ばれる端末のシンクライアント化が求められ、後者では本人確認を強化するために7Payのニュースでも話題になった2段階認証や、より専門的には多要素認証と呼ばれる対策が求められています。
特になりすまし等による不正ログインについては、米国国家機関も多要素認証をVPN製品と併用すべきと緊急リリースを出しました。VPNを単体で利用するのは決して推奨されません。十分気をつけましょう。
テレワークの導入手順
目的整理
「どのような結果を得るためにテレワークを行うのか」ということを、明確にしなければなりません。目的が曖昧だと社員も戸惑ってしまいます。例えば、社員の通勤時間を減らして「業務効率改善」や「ワークライフバランスの向上」を目的にするのか、「営業マンが顧客との接点を多く持てるようにする」など、目的を明確にすることが必要です。
プロセスと推進体制を整理
いつまでに導入するかを明確に定めておきます。導入時期を明確にしておくことで、取引先にも周知ができるからです。例えば、来年の4月には全社で段階的にテレワークを始めていくと決まれば、取引先にも文書やメールで知らせることができます。取引先への細かいフォローやコミュニケーションを実施することで、今後のビジネスでもスムーズな取引ができるでしょう。
そして、テレワーク導入のための推進体制は、各部署から数名を集めてチームとして進めましょう。社内でのテレワークの意義の理解と共有を図っていくためです。セキュリティの面に関しては、情報システムに関する部署が中心となり進めましょう。
業務分析
どのような業務でテレワークが必要かを会社が把握します。基本的には1人で完結できる作業がテレワークが推奨される業務です。以下は一例になります。
- 会議資料や顧客への資料作成
- 発注作業や営業成績などのデータ入力
- Webページのデザインの作製・更新
- スマートフォン用アプリやシステムの開発
対象者を選ぶ
テレワークを実施することで、メリットが多い職種についている人を中心に実施しましょう。ここではテレワークを実施した場合、営業やプログラマー、デザイナーに期待できるメリットや業務をまとめました。
テレワークの対象者の一例
メリット | 業務例 | |
営業 |
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プログラマー |
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デザイナー |
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テレワーク体系を決めて制度見直し
従来よりも、仕事で挙げた成果や実績で評価する割合が増えていくでしょう。通勤や移動時間による時間ロスが無くなり、より結果が求められる環境が整えられているからです。特に営業やプログラマー、デザイナーなど、売上や納品物の質といった成果を数値化しやすい職種の人は、目標に対して「どのくらい成果を挙げられたか」といった指標で、評価されていくでしょう。
一方、事務や総務、経理といった普段の仕事ぶりや成果を数値化しづらい人の評価基準をどう決めるかが課題となっています。仕事の量と質のバランス、勤務態度などを把握するのが難しいからです。会社として評価基準を明確にし、社員に提示することが求められます。
これまでの評価方法は、自分の目に映るオフィスでの行動が中心でしたが、テレワークの実施で普段の勤務態度が見えづらくなりました。そのため、管理職は「成果に至るまでのプロセス」や「勤務態度」が、不透明なことに不安を抱いています。部下の行動を正しく把握するには、コミュニケーションを取る頻度を増やすことが大切です。
例えば、1週間に2~3回、30分以内でチームや部署単位での会議を開いたり、週に最低1回は1対1で面談する時間を設けたりと、コミュニケーションを頻繁に取ることで、仕事の進捗状況を確認しましょう。ただし、ルールを細かく決めすぎると、「常に監視されている」と、社員が感じて仕事がやりづらくなるので、バランスを見極めましょう。
社内規定などの改定
通常勤務とテレワークで労働時間や条件に変更が無ければ、改定する必要はありません。しかし、テレワークによって通信費や印刷代など費用が発生する場合は、社内規定や就業規則の改定が必要です。また、テレワークの導入に際してフレックスタイムを導入する場合でも、就業規則の改定は必要です。特に就業規定は従業員が10人以上在籍する企業では必須です。就業規則が無い企業に関しては、就業規則に相当するものを作成したり、従業員と労使協定を結んだり、形として残しておきましょう。
セキュリティの強化
社員への意識改革とPCやスマートフォンなどデバイス機器の「技術的なセキュリティ」の確保が必要です。社員への意識改革に関しては「会社からの情報を一時的に持ち出している」と教育をしましょう。通常、会社から支給されるPCやスマートフォンは、社内に置いておけば他人の目に触れる可能性は非常に低くなります。PCやスマートフォンの紛失や盗難に注意し、顧客に訪問する際は常に持ち歩くといった、情報漏洩への警戒を社員に伝えましょう。
技術的なセキュリティ対策に関しては、ウイルスやハッカーから情報を守るため、専門家を頼ったリスク管理やセキュリティソリューションの導入といった対策が必要になります。
業務で使う書類の電子化
テレワークの推進には、ペーパーレス化の促進は不可欠です。しかし、これまで紙書類での処理に慣れてきた業務体制をいきなり全て変えるのは得策ではありません。段階を踏んだ変更が必要です。次は書類の電子化を段階的に進めた一例になります。
- ルールやマニュアルの策定
- 社員へのマニュアルの教育
- 紙と電子データで保存する資料の分類
- 分類した資料の保存場所を明確化
- 電子押印も可能なワークフローシステムの導入
業務や会議中に「ペーパーレス」を積極的に発言していくことで、「ペーパーレス」という単語が強く意識付けされていきます。また、「ペーパーレス」という言葉の意味を「全ての書類や資料を電子化する」と考える必要はありません。「紙の使う量を減らしていく」と考えれば、ハードルは低くなります。例えば会議資料の印刷を無くしたり、出張費の申請などを全てオンライン上で完結したりなど、できる部分から始めていくことが大切でしょう。
社員の意識を変えるための研修
テレワークを導入する上で、下記の3点を研修の場を設けて社員に伝えてください。
- テレワークの意義やメリットを理解
- 働き方
- 仕事の進捗は細かく毎日報告
まず1つめは、社員にテレワークを行う意義やメリットをしっかり伝えることです。テレワーク導入の最も大きいメリットは、働く場所や時間の制約を受けないことです。例えば、過去優秀な実力を持っていた女性たちは、従来の出勤ありきの働き方では家庭と仕事の両立が難しく、多くの女性が退職せざるを得ませんでした。
しかし、テレワークが導入されれば、仕事を続けながら家事や育児を行うことが可能です。会社としても、優秀な人材の流出を避けることができるので、両者にメリットがあるでしょう。一方で、これまでと意識を変えなければいけない部分もあります。仕事ぶりや成果までのプロセスを今まで以上に上司に報告することです。
上司は普段の仕事ぶりが見づらくなったため、「仕事が問題なく進んでいるのか」や「サボったり、生産性が落ちたりしていないか」といった点が心配です。一方、一般社員も「正しく評価してもらえるのか」といった不安や「報告ばかり求めてくる」といった不満など、お互いに疑心暗鬼になっています。
互いの不安を払拭するためにも、上司にはその日の業務内容や仕事の成果をメールやチャットツールで毎日報告しましょう。たとえ良い結果が出ていなくても問題ありません。「客先との価格交渉に難航している」や「客先に提案した商品の評価待ち」といった具体的な経過を加えると、上司も仕事の状況が見えるので安心します。
試験導入
本格的に導入する前に、例えば1か月、3か月、6か月、1年間など、期間限定でテレワークを実施してみてはいかがでしょうか。いきなりテレワークを全面導入するよりもハードルが低いでしょう。そして、テレワークを実施した後に社員から評価の声を聞いてください。
例えば「集中して作業ができたことにより、業務効率が上がった」や「通勤時間が無くなり体力的にも楽だった」などと、色んな意見が集まるでしょう。テレワークを導入したことによって、社員にとってどのような効果があったかを把握することが大切です。
テレワークは導入自体が目的ではなく、社員にとって働きやすい環境を整備する「手段」です。効果が見えなければ、導入しないことも選択肢の1つでしょう。本格導入前にメリットやデメリットを把握することで、社員にとって満足度が高い働き方を実現できます。