この記事ではテレワークに必要な体制について、ソフト面とハード面から広く解説しています。テレワーク体制を構築する上で調整する社内規定や導入すべきICT機器などについても言及していますので、ぜひご覧ください。
テレワークに必要な体制とは?
テレワークを行う上での社内ルールの改定、ペーパーレス化の促進、ICT環境の整備をすることが大切です。全てのことを一度に行おうとすると、実務の効率が低下や従業員に過度な負担がかかります。経営層がテレワークの導入意義やメリットを理解し、スムーズに導入するためにはどのようなステップを踏むべきか考えることが大切です。
ルールの整備
4つのルール整備が必要です。
- 就業規則・社内規定の修正
- 人事評価制度の確立
- 書類の保存方法の整理
- セキュリティルールの周知
総務省の導入手順書を参考に一つ一つみていきましょう。
就業規則・社内規定の修正
テレワークを導入したことでの費用発生や労働時間の管理方法など、労働条件の変更がある場合は就業規則や社内規定の変更が必要になります。例えば、テレワークにより従業員が自宅で書類を印刷するための印刷費やPCやスマートフォンを使うことによる通信費が発生する場合は、就業規則の変更が必要です。同様に、テレワーク勤務における労働時間の変更やフレックスタイムを導入する場合も、同じく変更が必要です。適用される企業規模ですが、10人以上従業員が在籍している企業は変更の対象になります。
労働時間の管理方法に関しては、始業・終業時間の管理と業務時間内の在席確認のルールを決めておく必要があります。始業・終業時間の管理に関しては、例えば、Eメールやビジネスチェットでの連絡、電話での報告など、業務を始める前と終わった後に必ず上司に連絡するといった、部署やチームごとにおけるルールを必ず決めておきましょう。そして、在席確認に関しては常に連絡を取れるようにしておくか、定期的に1日の間で何度か上司がチェックするなど、こちらもルール決めが必要になるでしょう。子どもの送迎や介護などで席を離れる場合は、あらかじめ上司に伝えておくとトラブルを回避できます。
ただし、上司側があまりに細かいチェックをすると、部下が不信感を持ったり、業務効率が下がったりとあまりいい効果を生み出しません。特に仕事を真面目にしている社員や優秀な社員にとっては、「しっかり仕事や結果を出しているのに、サボっていると思われている」と感じ、モチベーションが下がる要因となるでしょう。
人事評価制度の確立
従来よりも成果主義にシフトしていくので、評価基準を明確にすることが求められます。これまでは、普段の勤務態度や業務の質や量のバランスを実際に自分の目で確かめて評価することができました。しかし、テレワークの導入で普段の仕事の取り組み方が見えづらくなっています。
実際に上司としても「どのように評価をするべきか」わからないと感じている方も、多いのではないでしょうか。対策としては「仕事の見える化」を行い、仕事への取り組みがわかる環境作りが挙げられます。
例えば、週に2~3回、30分以内で個別での面接を行ったり、部署での全体会議を月曜日と金曜日で実施したりと、個々の仕事ぶりの把握と部署単位で仕事の進捗具合や課題の共有を行うのです。従業員同士も顔を合わせる機会や仕事の進捗具合を共有する場があることで、精神的に安心する部分も生まれてきます。
そして、経理職や営業事務、総務など普段の仕事ぶりの成果が数値化しにくい職種は、上司がどのような点を重視して評価すれば良いのか、会社として明確にすることが大切です。一人で仕事を完結できるデザイナーやプログラマー、数値がはっきりと出る営業職と異なり、評価基準の差をつけにくいためです。
もし、テレワークの導入が短期間であり評価基準が明確に出ない場合は、賞与を一律の基準で支給して、来期以降に新しい評価基準で賞与を支給するのも一つの選択肢です。従業員から賞与についての不満が出る場合は、評価の公平性が不透明であったり、評価基準が曖昧な場合です。全ての社員が同じ掛け率の支給額であれば、少なくとも公平性は保たれます。
書類の保存方法の整理
テレワークの導入には、ペーパーレス化の促進は不可欠です。しかし、一度に全ての書類を電子化するのは難しく、段階的な導入が求められます。まずは、不要な紙書類の削減と電子データと紙どちらで保存をするのか区別してください。例えば、見積書・発注書・契約書など顧客情報に関わる書類はPDF化し、社内システムのファイル内に格納しておくことや、会議における会議書類の印刷を止めるといった、できるところから始めていくことが大切です。
社員へのセキュリティルールの周知
特に外回りやテレワークが多い、営業マンやプログラマーなどが該当します。会社から支給しているPCやスマートフォン、タブレットの情報流出や漏洩リスクに関しての意識付けです。例えば、営業マンであれば、顧客との商談に必ずPCやスマートフォンを携帯することや商談の間に立ち寄るカフェでの、メールの内容や社内データの盗み見を防ぐために、覗き見防止フィルターの着用を義務付けるといった対策を行います。一方、プログラマーの場合は、PCの使用状況の見える化を実施してください。PCを開いている時間が長いほど、マルウェア感染や情報漏洩のリスクは高まるからです。残業する場合は、上司に何時までPCを使うかの連絡や業務が終わってからの報告など、濃密なコミュニケーションを取ることが求められます。
ICT機器の整備
ICTは、(Information and Communication Technology)の略語です。ここでは、PCやスマートフォン、タブレットといった各種端末の用意と社外から社内アクセスを行う際のネットワーク環境の整備について触れます。
各種端末
使用端末をシンクライアント化します。シンクライアントとは、サーバー側でデータ処理や更新が行われ、PC上ではキーボードやクリック操作といった最小限の機能に留めることを指します。PC上でデータが保存されないため、盗難や紛失にあっても影響を最小限に抑えることが可能です。
シンクライアントを行うには4種類の方法がありますが、ソフトインストール型やUSB型は、低コストで実施できるためおすすめです。実際に2019年から三菱東京UFJ銀行は、既存PCをシンクライアント化することでテレワークを推進していました。そして、スマートフォンやタブレットに関しては、インターネットやアプリの使用制限を行うことで、情報流出のリスクを軽減することができます。
ネットワーク環境整備
仮装デスクトップ方式やクラウド型へ移行する方法が候補として挙げられます。仮装デスクトップ方式は、インターネット上に複数の架空PCを作り、インターネット経由で情報が送られます。VPN(Virtual Private Network)と呼ばれるインターネット上に仮想の専用線を設けて、データ通信を行う仕組みです。既存の社内システムに新たに加える必要が無く、場所や端末を問わずに利用できる点が魅力です。ただし、VPN自体は三菱電機のセキュリティ・インシデントで顕在化したように、大きな課題を抱えています。本来社内ネットワークを拡張するVPNではなく、インターネット回線でもセキュアにシステムを利用できるように多要素認証やDaaSを導入する事が求められます。
セキュリティの強化
社内ルールの整備やインフラのクラウド化が挙げられます。まず社内ルールの整備についてですが、怪しいメールは開かないといったことやSNSの取り扱いなど、従業員へのルール徹底を行ってください。特にテレワークになるとオフィスにいた時よりも相談ができなくなるため、従業員一人一人が情報に対しての意識を変えておくことが求められます。そして、ネットインフラのクラウド化ですが、上記で述べたシンクライアントのようにサーバーやクラウド上でコンピューター資源を利用する企業が増えています。元々は自社内でネットインフラ設備を置くオンプレミスが基本でしたが、クラウド製品の安全性への信頼の高まりや働く場所の多様化に伴い、クラウド化に移行をする企業が増えています。クラウド化に移行することで、「使いたい場面で使いたい分だけ」ネットインフラを使えるといった点や管理者の業務削減にもつながります。
導入すべきツールやサービス
このセクションでは、テレワークの体制を整える上で導入すべき、もしくは有効活用できるシステムをご紹介致します。
コミュニケーションサービス
場所を問わずにスピーディーにコミュニケーションが取れる、オンライン会議システムやビジネスチェットの導入を行う企業が増えています。
オンライン会議システム:Zoom
PC、スマートフォン、タブレットなどデバイスを問わずに使えるオンライン会議システムです。オンライン会議だけではなく、最近では職場や友人たちとの飲み会にも使われています。 名前を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。Zoomのメリットを表にまとめました。
メリット | 特徴 |
接続が安定 |
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ログイン作業が不要 |
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多彩な機能 |
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チャットシステム:Chatwork
社内外でのビジネスコミュニケーションを円滑にするチャットシステムです。メールとは異なり、絵文字や画像など柔らかい形でコミュニケーションを取ることができます。グループやチーム内でビデオ通話や打ち合わせを行うことも可能です。メッセージ内容は全て暗号化されており、データは一部の人間にしか閲覧できない仕組みを取っているため、セキュリティ対策も万全です。KDDIと連携を結んでおり、セキュリティ水準や通信の安定性の質が非常に高く、約27万社の企業が導入しています。
各種クラウドサービス
業務効率改善やセキュリティ面の向上などに役立つシステムを紹介します。
CRM:Salesforce
Salesforceは、ビジネスアプリやクラウドプラットフォームを提供している、セールスフォース・ドットコムが製品化した顧客管理システムです。CRM(Customer Relationship Management)顧客情報管理は、顧客との関係や商談状況を管理して顧客のニーズを正確に把握することで、顧客満足度と自社の売上を向上するためのシステムです。CRMの販売を中心にしているセールスフォース・ドットコムは、フォーブス誌が選ぶ「世界で最も革新的な企業」で4年連続で1位に選出されました。2018年、19年には「Great Place to Work Insutitute 」が実施した調査で、「働きがいのある会社」で1位に選ばれた実績を持ちます。
Salesforceを営業の分野で導入した場合の導入効果をまとめました。
Sales Cloud機能 | 導入効果 | |
顧客管理(CRM)+営業支援(SFA) |
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労務:SmartHR
SmartHRとはクラウド上で従業員の個人情報を一元管理する労務システムです。入社手続きや雇用契約、年末調整などの必要な情報は従業員に入力してもらい、情報は全て電子化して保存するため、人事担当者の業務負担を大幅に減らすことができます。
機能 | 導入メリット | |
特徴 |
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名刺管理:SanSan
近年のオンライン商談にも対応したクラウド上で名刺を管理するシステムです。名詞管理が楽になる点とマーケティングにも活かしていける点が魅力となっています。まず、オンラインで名刺を管理することで、取引先の名刺を探す手間と時間を大幅に省くことができます。
名刺入れやファイルでの管理は、大変ではありませんか。顧客側で部署移動や担当変更があると、その分名刺の整理や追加をしなくてはなりません。また、自社で担当が変わった場合でも、オンライン上にデータを登録しておけば、後日担当変更のご挨拶や商談に伺うことができます。そして、名刺データを社内の営業システムや顧客データと結びつけることができるので、キーマン選定の共有や営業戦略を立てる際にも有効に利用できます。
セキュリティ対策
EDR:ソフォス
EDR(Endpoint Detection and Response)とはPCやスマートフォンいったエンドポイント端末内での不審なアクセスや検出を行うことを目的とする商品です。EDR商品で特にユーザーからの評価の高いベンダーは、ソフォスになります。ソフォスは、AIを駆使して世界トップクラスのセキュリティ水準を誇るEDR製品やファイアーウォール製品を販売しています。ソフォスのEDR製品で、ユーザーからの評価が高いSophos Central Intercept Xの特徴を下記にまとめました。
ランサムウェアはPC上の画面が暗号化したり、ファイルが開けなくなったりとユーザーのPCを操作不能な状態に追い込み、元の状態に戻す代わりに多大な身代金を要求する危険なウイルスです。Sophos Central Intercept Xは、AIや動作解析を活用して未知のランサムウェアの攻撃を阻止することができます。また仮にファイル内に侵入した場合でも、CryptoGuardによって攻撃を停止させて、攻撃されたファイルを自動的に復元させます。そして、既存と未知のマルウェアの検知精度も高いため、アプリケーションの脆弱性を突く攻撃や修正プログラムの前に攻撃を行うゼロデイ攻撃を防ぐことが可能です。
2段階認証や多要素認証:LOCKED
LOCKEDはオンプレミスやクラウドの環境に依存せず、業務システムに対して多要素認証を迅速に導入できるサービスを提供しています。機密情報を扱うシステムに対するセキュリティ性の不安を解消するため、パスワード+SMSの認証番号の入力といった、複数の認証がないとログインできない、多要素認証といった認証基盤を提供しています。多要素認証はVPNの課題を解決する手段として、また近年急速に注目を集めるゼロトラストセキュリティを実現するための手段として非常に注目されています。
MDM:アイキューブシステムズ
MDM(Mobile Device Management)はモバイル管理サービスと呼ばれ、スマートフォンやタブレット端末を一元管理し、セキュリティ性を確保するためのシステムです。紹介するベンダーは、アイキューブドシステムズです。アイキューブドシステムズは、9年連続で国内のMDM市場でシェアナンバー1を誇り、Googleからは公式認定MDMベンダーに選出されています。Googleの公式認定MDMベンダーは、アイキューブドシステムズを含めて世界でわずか9社しかありません。
アイキューブドシステムズのモバイル管理サービス、「CLOMO MDM」の特徴を下記にまとめました。特に大きなメリットは、ユーザーのデバイス機器を一元的に管理できる点と盗難・紛失対策です。前者は異変があればすぐに状況を把握できる点がメリットで、後者はデータのロックや初期化を遠隔で行うことができるので、盗難や紛失の影響を最小限に留めることができます。
特徴 | 導入効果 | |
デバイス・アプリ制御 |
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盗難・紛失対策 |
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